福島在住・6才未満未就学児童を対象とした無償・尿 放射能検査の実施要領

対象者(福島県在住 6才以下の未就学児童)への無料 尿・放射能検査については、12月より順次検査を開始します。 

尿・放射能検査の検査法解説

内部被爆検査としてバイオアッセイ法である尿・全ベータ線計測を実施

尿の放射能検査

内部被爆検査において尿検査は、体内への放射性物質の取り込みの目安として重要な指標となります。
放射能測定としては、γ線による放射性ヨウ素・放射性セシウムの測定及びβ線による放射性ストロンチウムの測定、さらにプルトニウムなどのα線核種の測定があります。

内部被爆においては、α線・β線がより大きな脅威となります。 γ線は、透過率が高い為、外部被爆においては、体内への影響として最も警戒が必要ですが、人体内部に取り込まれた放射性物質としては、α線・β線を放出する核種は、透過率が低い為、よりエネルギーが細胞にダメージを与えます。
このため内部被爆の迅速検査として、まず全β線・α線の計測が有効です。

放射性ストロンチウムは、γ線を出しませんので、γ線計測では検出できません。 一方、放射性セシウムはγ線の他、β線も出しますから、β線測定でも検出可能です。 このため検体の全β線を測定すれば、放射性セシウム・放射性ストロンチウムの存在の可能性が指摘されます。 不検出の場合には、両方の放射性物質が尿中にない事になり、内部被爆のリスクは低いものとなります。

尿中から、β線が計測された場合には、γ線精密測定により放射性セシウムを特定します。 さらに放射性ストロンチウムを抽出・精製した上でβ線測定を行えば、放射性ストロンチウムの確定が可能です。
ただし、放射性セシウムの精密検査には、尿を検査する場合でも1−2Lと多量の尿が必要であり、これは乳幼児では事実上困難です。 放射性ストロンチウム測定の場合には、抽出・精製工程が必要であり、よりコストがかかります。

以上の点から、まず比較的測定が容易な全ベータ線を測定し、放射性物質の尿中の有無を確認し、検出された場合、精密検査する事が合理的です。

検査の流れと現状の検査法との相違点

上記のように全β線測定による内部被爆検査は、まず放射性物質が微量でも存在しないか迅速に検査する事を目的とします。 尿の検体量が少ない乳幼児の場合、尿をシート等で乾燥・濃縮した後に、測定を行います。 測定には、低バックグラウンドα・β線測定装置(CANBERRA SERIES 5XLB)という装置を使用します。 この装置は、内部に鉛により外部と遮蔽された測定部があり、ここに検体を導入して測定を行います。 1回の測定は60分、50検体まで連続測定が可能です。検出限界としては、0.01Bq程度までの感度を有しますが、仮に尿サンプルを20ml使用した場合には、1Lに換算すると50倍となりますから0.01 Bq x 50=0.5 Bq/L程度の感度を有するものとなります。 定量においては、さらに検出カウント数等を踏まえた検証が必要で、だいたい2Bq/L程度であれば有効に検出できます。

一方、γ線測定はより手軽です。 γ線測定でもゲルマニウム半導体検出器による測定は、放射性セシウム134,137の特定が可能であり、かつ1Bq/L程度でも十分に検出可能です。 ただし、サンプル量が1−2L必要です。 100ml程度でも測定可能ですが、この場合には、測定時間を長く取らないと定量限界が下がりません。  NaIシンチレーション検出器による検査も可能です。 この場合には、放射性セシウムの134,137の特定は困難です。 
乳幼児の尿の放射能の測定としては、現実的には、1−2Bq/L程度の検出感度は必要でしょう。 NaIシンチレーション検出器は、検出感度は良好ですが、定量する上では、やはりゲルマニウム半導体検出器による測定に劣ります。 20Bq/L程度の濃度であれば十分に使用できますが、1L中に数ベクレルの放射性セシウムを検出するのであれば検出時間を長くする必要があります。 

同位体研究所では、内部被爆検査としての尿検査を実施するに当たり、より迅速広範囲な検査が可能な、全β線測定を行い、放射性物質が検出される場合には、γ線の精密検査または、放射性ストロンチウムの検査などによる精密検査を行う段階別検査を導入しました。 今回、福島県在住者を対象とする尿検査は、全β瀬測定による検査及び検出時の特定検査となります。 ただし、特定検査については、追加の検体量が必要となりますので、実施時は、別途サンプルが必要となります。

全体の検査手順を図示すると以下のようになります。

内部被爆検査フロー.jpg


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