測定技術情報


基準値(規制値)と測定に必要な定量下限値

食品分類毎の新たな規制値に対応した測定方法は?

基準値を満たすための測定を行う場合、求められる測定装置の定量下限は?

厚生労働省が新たに定める食品の放射性セシウム規制値を踏まえた場合、該当する食品が規制値を満たしているのか放射能測定する場合、どの水準の定量下限値が必要でしょうか。 この意味は、規制値が100Bq/kgであったとした場合、100Bq/kgの規制値を満たすか、超えるかという測定においては、測定方法において、満たすべき定量下限値というものがあります。 もし定量下限値が50Bq/kgという測定方法(測定装置)であった場合には、この装置が90Bq/kgという値を出した場合、規制値に適合すると判断できるかというと、適切ではありません。

規制値に適合するかを測定する上で、測定された値(定量値)の信頼性を得る為には、少なくとも測定装置は、規制値の1/10の定量下限をもつ必要があります。 もし規制値が10 Bq/kgである飲料水を定量下限10 Bq/kgの測定装置で測定した場合、正確に10 Bq/kgの規制値に適合するかを判定する上では信頼性が得られません。 10 Bq/kg(セシウム)合算の規制値であれば放射性セシウム134, 137それぞれを0.5 Bq/kgで定量する能力が必要となります。 飲料水の測定がゲルマニウム半導体検出装置で行う必要があるのは、この理由によります。 

(新規制値一覧と測定に必要な定量下限)

食品の放射性セシウム規制値(新規制値)
単位:Bq/kg  規制値(放射性セシウム合計)

測定装置 必要定量下限

放射性セシウム合計

測定装置 必要定量下限

放射性セシウム137

測定装置 必要定量下限

放射性セシウム134

一般食品 100 10  5
牛乳 50 2.5 2.5
乳児用食品 50 2.5 2.5
飲料水

 10 

1 0.5  0.5

簡易計測と精密計測をどのように使い分けるか。

それでは、NaIシンチレーション検出器とゲルマニウム半導体検出器をどのように使い分ける事ができるでしょうか。
もし放射性セシウムの含有が非常に低い、またはほとんどない食品の場合であればスクリーニング検査として測定を行い50 Bq/kgを超える値があるかを検証します。 NaIシンチレーション検出器の定量下限はおおよそ20〜50 Bq/kg程度(測定時間を長くとると10 Bq/kg程度まで下がる)ですので、規制値100Bq/kgに対して,50%の水準である50 Bq/kgを超えるかどうかを測定できます。

定量下限50 Bq/kgのNaIシンチレーション検出器で、「検出なし」であれば、規制値への適合は確保されると考えられます。 もしNaIシンチレーション検出器で規制値の50%(つまり一般食品で50 Bq/kg)を超える検出があれば、ゲルマニウム半導体検出器による確定測定を実施し、含有量を確定する事が妥当となります。

牛乳・乳児用食品、飲料水については、ゲルマニウム半導体検出器での測定が必要

一般食品については、新規制後もNaIシンチレーション検出器での測定をスクリーニングとして使用は可能です。 しかし飲料水については、ゲルマニウム半導体検出器以外では、検査は困難です。 また乳児用食品・牛乳の場合、規制値の50%が25 Bq/kgとNaIシンチレーション検出器の定量下限付近となる事から、やはりゲルマニウム半導体検出器での測定が望ましいと考えられます。
新規制の導入により、一般食品は、NaIシンチレーション検出器によるスクリーニング検査とゲルマニウム半導体検出器による確定検査という構成が一般的となるでしょう。 また牛乳・乳児食品・飲料水については、ゲルマニウム半導体検出装置による測定が必要となります。


NaIシンチレーション検出器をスクリーニング検査として用いる場合、定量下限を踏まえた測定時間には特に注意が必要です。 校正用の標準線源以外に、日常の測定にて測定値が安定して得られるか日常校正用のワーキングスタンダードを用意すると良いでしょう。