測定技術

米のゲルマニウム半導体検出器による測定(受託翌日:受託後24時間以内検査)

放射性ストロンチウム・・低バックグラウンドα/β線測定

放射性ストロンチウムの測定の課題

何故簡単に放射性ストロンチウムは測定できないのか。

R0017577.jpg放射性ヨウ素やセシウムなど、ほとんどの放射性物質は壊変の際にγ線を放出します。 このγ線は、それぞれの物質毎に固有のエネルギーを有する為に、γ線のエネルギースペクトルを測定する事で、どのような核種かを特定できます。 しかし、放射線ストロンチウムは、γ線を放出せずβ線を放出します。 β線は固有のエネルギーを持たないため、放射性ストロンチウムを測定する為には、まず放射性ストロンチウムのみを検体から抽出し、その上でβ線を測定する必要があります。 このために検体からストロンチウムを抽出する手順が必要なのですが、この抽出過程が非常に煩雑なものとなります。 イオン交換法や、硝酸により放射性ストロンチウムを溶かし、その後回収する方法などがありますが、いずれも処理に多段階が必要な上、ストロンチウムよりも大きなエネルギーを出す事から、ストロンチウム90が壊変して生まれるイットリウム90のβ線を測定します。 これら一連の測定の為には、抽出処理、イットリウム90の生成の時間等を含めると2−3週間が必要となります。
これがストロンチウム90の測定が迅速に対応できない大きな理由となります。

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放射性ストロンチウムの抽出の新技術・3M社製固相抽出ディスク

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放射性ストロンチウムの測定には、上記のように検体より煩雑な手順で放射性ストロンチウムを分離する事が必要です。 従来はイオン交換法等によりセシウムを抽出し、不純物を除去した上で測定を行います。 この処理工程は、10段階以上で3週間以上を要します。
これに対して、固相抽出法という新たな手法が開発されています。 この技術は、米国スリーエム社が開発したエムポア・ディスクという特殊なフィルターを使うもので、溶液中のストロンチウムをディスクに直接吸着させる事で、迅速に放射性ストロンチウムの回収が可能となります。 すでに文部科学省、米国エネルギー省等で放射性ストロンチウム測定法として認められており、1週間程度で測定ができる画期的なものです。 水、米、牛肉、飼料、土壌に含まれる放射性ストロンチウム(Sr90/89)を精度良く測定が可能となります。同位体研究所は、このディスクを用いて、放射性ストロンチウムの測定試験を行っています。
R0017620.jpg固相ディスクは、それぞれ個別のパッケージに保存されており、このディスクを抽出用の器具にセットし、吸引しながら検体から酸によりストロンチウムを抽出した上え、週出液を通過させると、ディスクに放射性ストロンチウムが吸着されます。 その後ディスクを乾燥させ、β線測定装置で測定すれば放射性ストロンチウムが精度良く測定できます。 放射性ストロンチウムは、水に溶けやすく植物などにも吸収されやすい為、迅速な検査が必要となっています。 固相ディスクによる測定は、放射性ストロンチウムの測定工程を大幅に簡素化させるもので、幅広く放射性ストロンチウム測定の提供を可能とします。 
このように固相抽出による放射性ストロンチウムの迅速測定は、放射性ストロンチウム測定では非常に有力な分析法となります。 しかし、この分析法にも留意点があります。 それは検体中に、鉛、カルシウム、バリウム、安定ストロンチウムが大量に含まれと、固相ディスクに吸着されてしまし、ディスク当たりのストロンチウム吸着能力を超えてしまう事です(つまり、ストロンチウムがきちんと吸着されずにディスクを通過してしまう)
また鉛の場合では、放射性ストロンチウムと同様にβ線を発する放射性鉛が存在します。 従って、固相ディスクによる測定を行う場合には、妨害元素(カルシウムや鉛、バリウムなど)が大量に含まれる土壌や焼却灰、骨などの測定では、適切な前処理により妨害元素を除去する必要があります。
水、多くの食品、農産物などは固相ディスクでの放射性ストロンチウム吸着に妨害となる元素が多く含まれない為、より簡単に放射性ストロンチウムの測定が可能です。 同位体研究所は、土壌や焼却灰など、多種類の核種、妨害元素を含む検体についても、迅速法による効率的な測定が可能となるよう研究を継続しています。

公定法による放射性ストロンチウムの測定(文部科学省法)

放射性ストロンチウムの公定法としては、文部科学省の放射能想定法シリーズに放射性ストロンチウムの測定法が定められています。 この測定法は、検体を酸分解した後、ストロンチウム以外の元素を多段階の精製工程で除去し、ストロンチウムのみを回収します。 その上で、2週間以上静置する事で、放射性ストロンチウムから放射性イットリウムを生成させ、最終的には、この放射性イットリウムを測定して、放射性ストロンチウムの含有量とします。 イットリウム90を測定する理由は、ストロンチウム90に比べてイットリウム90の方が、強いβ線を放出する事から、測定がより精度よく実施できる事。 またストロンチウム90は、2週間以上放置すると壊変によりイットリウム90を生成し、検体中のストロンチウム90とイットリウム90の放射能濃度が同じとなる「放射平衡」に達する事から、イットリウム90を測定すればストロンチウム90の濃度が分かるという事です。

公定法検査は、土壌や、さまざまな検体を対象に測定法を定めています。 しかし、課題は、ストロンチウム90の精製に20段階以上の化学処理が必要である事、イットリウム90の生成まで2週間待つ必要がある事から、コストと分析所要時間が膨大となるという課題があります。
同位体研究所では、迅速法と公定法の両方の測定法を実施しています。 検査の費用や検体の種類、検査完了までの時間など、条件に応じての測定を提供しています。 

ベータ線測定装置・・CANBERRA SERIES5 XLB

R0017579.jpg放射性セシウム等、多くの核種の測定は、ゲルマニウム半導体検出器を用いたγ線スペクトロメトリーで行います。 しかし、放射性ストロンチウムは、ベータ線であるので、この装置では測定はできません。 ベータ線の測定には、液体シンチレーション測定装置を用いても可能ですが、高精度で効率よく測定を行う為に、CANBERRA社のシリーズ5XLBという低バックグラウンドα/ β線測定装置を用いています。 この装置は、内部に厚さ10cmの鉛遮蔽対があり、周辺からのベータ線を遮蔽し、検体を効率よく連続50検体測定する事が可能です。
放射性ストロンチウム測定の専用測定装置として使用されています。